イラストレーターやゲームクリエイター、Webデザイナー等を目指しているデザイン系の学生さんから「就活用のポートフォリオでAI生成した絵は載せても良いですか?」という質問を受ける事があります。
最近のAIによるイラスト生成技術の進歩は目覚ましいものがありますよね。
「AI絵師」なんて言葉もチラホラ出てきたり。
当コンテンツはAIで自動生成した作品をポートフォリオに載せる際の考え方について、業種別に解説いたします。また、制作会社の採用担当者、制作系の学校でのAI生成についての見解についても併せて解説いたします!
この記事の目次
まずはAIを使って生成した作品について解説します。
キャラクター、背景、コンセプトアートなど、様々なイラストやグラフィック作品が自動生成できます。
と、上記のように様々なタッチで描かれたイラストを自動的にAIが生成してくれます。
え?機械が描いたの?と思われる方も多い事でしょう。
非常に精度の高いイラストを生成できるAIが現実のものになりました。
それこそ絵を描いた事が無い方でも生成したいイラストの条件を記述してボタンをクリックするだけ、あっという間に赤の他人の作品を模したイラストを作成する事が可能です。
デッサンを一度もしたことが無い画力ゼロの方でも左図のようなイラストが生成できます。
AIでのイラスト生成サービスの使用料を払ってAIが他人の作品を模倣して自動的に作った絵です。
よって自身の画力や絵の才能は1ミリたりとも影響しませんし、著作権的にグレー。
ほんの少しの発想力とChatGPTの自動翻訳があれば左図のような絵が誰でも量産できます。
結局自身の手を動かして数を描かない限り画力も想像力も向上しません。
ズルした所で就職活動の際に全てのツケが返ってくるので…AIの使用は程々にしておきましょう。
クリエイターの就活用ポートフォリオにAI生成した作品を使う事はアリかナシか。
ポートフォリオは「その人自身が持つ力のみで作成」された作品であることが大前提です。
よって「AI生成作品のベタ使用はナシ」が一般的な回答です。
それを踏まえて各業界におけるポートフォリオについて考えてみましょう。
イラストレーターの場合
下記はイラストレーターの業務内容です。
- クライアントの要望を元に様々なイラストを描く
イラストレーターはキャラクターをはじめとした様々なイラストを描くことを生業とした仕事です。
キャラクターデザインから構図、配色など、多くの工程を経て1枚のイラストを完成させます。
例えば下記作品は宮月あずきさんによるイラストのメイキングです。
ラフ、キャラ、背景、全体の調整など、1枚絵を仕上げるのに多くの工程が必要です。
※なお、宮月あずきさんの作品はコチラの記事で紹介しています。
反面AIを使えばプロンプト(呪文)を羅列するだけで、キーワードに沿ったイラストを自動生成できます。
AIによる自動生成なので自身のタッチや独自の世界観・作品の制作過程が無く、イラストレーターのポートフォリオに掲載する作品として説得力はありませんが、基本的に高精度な作画が可能です。
かと言ってAIが描いた絵を「自分で描きました」と堂々とポートフォリオに載せられるでしょうか?
もし他者の作品をAIに学習させて生成した作品を臆面もなく自分が描いた作品だと偽れる考えの人がいれば…正直クリエイターとして疑問を感じざるを得ないですよね。
また、任天堂やディズニー辺りの作品を学習させ、著作権周りで大きな問題を起こすかもしれません。
採用担当や現場の方はその道のプロです。
偽りの作品を自身の作品だとプレゼンした所で…遅かれ早かれボロが出るでしょう。
AIを使うなら高い金を出して人を雇う必要がありません。
あくまでポートフォリオの作品は結果であり、会社や人事はその人のクリエイティブに対する追求心・向上心・個性・発想力・将来性等を重視します。
正直AI作品を羅列した偽りのポートフォリオを見せるより、日々の練習用クロッキーを見せる方が遥かに有意義です。AIに頼るのは程々に、心を動かせるイラストレーターを目指すなら地道に人が描く事で出せる絵の魅力を追求するのが結局のところ最短経路ですよ。
ゲーム会社の2DCGデザイナー
下記はゲーム会社の2DCGデザイナーで行う業務内容の一例です。
- 制作するゲーム内容に沿ったキャラや世界観のデザインの絵を描く
- 2DCGだけでなく、次に紹介する3DCG(モデル制作)を兼業にする場合も多い
ゲーム会社のデザイナー職への就職はイラストレーター同様、高いデッサン力が求められます。
対象物を正確に把握し紙面上へ忠実に描く力、素早く形を取って描く能力など、高い基礎画力が必要です。
ゲーム会社の2DCGデザイナーは先に紹介したイラストレーターとほぼ同じ業務内容です。
キャラデザ、コンセプトアートなど、ゲームの世界観を構成する絵を描く仕事ですね。
AIを使えば下記のようなコンセプトアート風のイラストを生成する事は可能です。
学習の元ネタは誰の作品か分かりませんが、精度の高さにビックリしますね。
AI生成の作品をポートフォリオに載せるのがアリかナシか。
考え方は人それぞれですが…絵を描く仕事が主となる業種なら「ナシ」と考えるのが自然です。
デザイナーがクリエイティブするコンテンツそのものを全てAIに任せる、という事自体に疑問を感じます。
補助的な使い方ではなく、まるっとAIに丸投げ。
そして著作権に対する考え方が欠如しているので、今後著作権関連で問題を起こす可能性がある。
早い話が「高い金出して君を雇う必要ある?別に君じゃなくてAIでいいじゃん。」って事です。
ゲーム会社の3DCGデザイナー
下記は3DCGデザイナーにおける業務の一例です。
- MAYAや3dsMax、Zbrush等でモデリング&スカルプト
- テクスチャの作成&貼り付け
- リギング、アニメーション
3DCGに関してはAI生成技術が2D系に比べてまだまだ発展途上なので、正直クオリティは酷いです。
とてもじゃないですが、ポートフォリオに偽って載せられる品質ではありません。
よって自身でコツコツと作成したモデルを載せる事になります。
問題点は「モデルの元デザイン」や「テクスチャ」ですね。
AIで自動生成したデザインやテクスチャを「自身で作成しました」と言い張るか否か、という事です。
正直「モデリング用のデザインやテクスチャくらいAI使わずに自作してよ…」が正直な意見です。
AI生成のテクスチャだとバレた瞬間「君はテクスチャを作るくらいの画像編集能力も無いの?」と思われても仕方ありません。
労働基準法やら労働環境云々…
ごもっともな意見ですが、基本的にゲームは「クリエイターが魂をすり減らす」事で面白くなります。
頭がおかしいと思われるかもしれませんが、事実です。
残業が、賃金が、プライベートが…を重視される方は基本的にゲーム制作は苦行。
よって自身の力のみでポートフォリオの作品全てを作り上げる気概・制作への渇望が無い方には…ゲームクリエイターとして日々業務をこなすのは厳しいかもしれません。
Web制作会社のデザイナーの場合
下記はWebデザイナーの業務の一例です。
- PhotoshopやIllustratorでWebサイトをデザイン(紙面デザインも並行して行う事も)
- HTML・CSS・JavaScript・WordPress等でサイトを構築・組み込み
- サイト用のイラスト素材などを制作する事もあるが、基本的にメインの業務ではない
WebデザイナーでAI生成した画像の使用はアリかナシか。
この職種に関しては担当する作業内容と使用箇所によってはアリだと考えます。
要はWebデザイナーは基本的に「絵を描く仕事がメインではない」からです。
絵や背景はWebサイトを構成する素材の一つ、それらを組合わせて一つのグラフィックやコンテンツを作り上げていきます。
社内ですべての素材を1人のWebデザイナーが作る事は稀です。
イラストや写真は外注・素材購入、文章はライターを別途雇う等、Web制作では当たり前。
また、PhotoshopやIllustratorを使ったデザイン制作だけでなく、HTML・CSS・JavaScript、WordPress等のCMSでサイトをコーディング・実装する事もWebデザイナーの業務に含まれます。
もちろん全て自作する事が望ましいです。
しかし著作権に気を付けていれば、Web系は背景やバナー用イラストの素材といった限定的な使用はアリという風に考える方が多く、AIの自動生成画像に対して否定的ではないです。
下記はPhotoshop(フォトショップ)の [ ジェネレーティブ塗りつぶし ] という機能を使った作例です。
背景を別物に差し替えたり、幅の足りない画像を拡張、そして画像内の不要な要素を削除したり要素を追加したり…
Adobe社が誇るAdobeSenseiというAIが自動的に行ってくれます。
Webサイトをデザインする上でこういった画像加工はよく行います。
先に解説した「赤の他人のイラストをパクって生成」するのではなく、画像編集を自動化してくれる部類なのでAIの利用に関して特に偏見が無い印象。単に便利な機能として捉える事ができるのです。
これら加工した写真素材にキャッチやアイコン等を添えてバナーデザイン等を作成、といった流れですね。
著作権の概念や絵描きさんへの敬意が微塵も存在しないAI生成イラストとは少し感覚が違う分野です。
絵が描ける人はデザインもできる
画力が高い人はUIデザインやポートフォリオ等のデザイン作業ができる方が多いです。
文字の配置、余白、ジャンプ率など、イラスト制作で培った感覚がデザインにも自然と生かせます。
また、上記の方は向上心が高く、高い観察眼で良質なサンプルを参考にしながら自身の力で改定を加え、クオリティを自身の力で自ずと上げていきます。参考資料の選定が上手く、どういう段階を経たら質が上げられるかを理解できているのです。
※なお、ゲームUIの作り方はコチラの記事で、学生さんによるゲームUIの作例はコチラの記事で詳しく解説しています。
しかしAIの自動生成イラストをポートフォリオに載せる方は基礎画力が低い傾向にあります。
デザインの引き出しが少なく、観察力も足りない状態。
ぱっと見絵は綺麗だけどポートフォリオの構成はイマイチ、レイアウトやデザインはパワポですか?みたいなチグハグした作品集になりがち、AIの絵は見るまでも無く「あー…」という印象で終わります。
作品集の要素全ての品質に統一感が無く、見ていて不安な「ポートフォリオもどき」ですね。
AI生成に頼りすぎると…自身の画力や発想力が悲しくなるくらい劣化するので注意して下さい。
やたら手を隠したポーズやトリミング、塗りのクオリティや密度に対する初歩的なデッサンやパースの狂い、情報量の多い背景内に意図していなさそうなオブジェクトの混入など…
人間味を感じないAI生成のイラストである事を示す情報は無数にあります。
特に絵描きなら積極的に見せたい「手」ですが、偽りの絵描きは意図的に手を隠しますよ。
結論として「プロ」のイラストレーター、ゲーム業界のデザイナーを目指すならAIによる自動生成画像に頼ったポートフォリオ制作は止めておく方が得策です。
趣味レベルで構わないなら、著作権にさえ気を付けていればどちらでも構いません。
業界的な観点
私がお世話になっている学校、制作会社の採用担当者は「AIで自動生成した絵をポートフォリオに載せるのはナシ派」が大多数です。
そもそもイラストやゲームグラフィック系の学校や企業なので、メインの仕事をAIに代行させる事はあり得ないですからね。。。当然と言えば当然です。
ただし、Web業界に関しては肯定的な意見の方も多いです。
私個人としては「デザイン&フロントエンドをこなす総合的なWebデザイナーなら限定的にアリ、デザイン一本で勝負するならAIに頼るのはデザイナーとして名折れですよね」という感覚です。
今後はAI生成されたイラストが業務で使われる事が多くなるでしょう。
ただ、効率も含めた業務ではなく、自身のオリジナル作品を掲載したポートフォリオにAI生成作品を使うのは違うよね…と考える方が私も含めて多数派です。
半年前なら物珍しさで稼げていたでしょうが、今AI作品を出してもオワコンなので時間の無駄ですよ。
あくまで補助的な使用に留めておく
AI生成は一概にダメという訳ではありません。
業種や使用頻度・使用箇所によります。
また、作画の研究等にもAIは活用できます。
しかしイラストレーターやゲーム業界の2Dデザイナーは「イラストそのものを描く仕事」です。
そのメインの仕事をAIに他人の作品を学習させて代行させ、「ポートフォリオに自身の作品です」と偽る。
その発想、考え方が「プロ」のイラストレーターやクリエイターとして根本的に不向きです。
先のCG集然り、メインコンテンツにAI生成作品を使用すると、間違いなく人や数字は離れます。
Webデザイナー志望でアニメや漫画系コンテンツをテーマにしたサイトを制作したい。
その際に必要な素材をAIで生成、こういう使い方はまだアリです。(AI生成である事は明記しましょう)
勿論全て自作できるに越したことはありませんが、Webデザイナーは絵を描くことだけがメインの仕事ではありませんからね。
要はイラスト制作がメイン業務か否か、学習元の絵は自作か否か、メインコンテンツにAIを使うか否か、そこが主な争点です。
基本的にポートフォリオは自身の力だけで作成したコンテンツが基本ですが、絶対にAI生成がダメという訳ではありません。自身が希望する職種とのバランスを考えて上手く活用しましょう。
AI作品を載せるかは「自己責任」
AIで自動生成された作品のポートフォリオへの使用は、結局のところ「その人の自己責任」です。
推奨はしませんが、載せたい方は載せて頂いて全く問題ありません。
ただし、高確率でAI生成したことがバレます。
本気で「プロ」を目指しているならAI生成作品を掲載するのは止めておきましょう。
ポートフォリオは単に作品のクオリティだけでなく、その人の内面も併せて見ています。
そこにAIでの制作物を入れると異物感が漂います。
(1つだけしれっとAI作品を入れても分かるものですよ。)
また、自身の制作物に対する想いやこだわりが強い方は心配ありませんが、中途半端な考え方の人はポートフォリオにAI生成した作品を載せがちです。そして全体のクオリティに統一感が無く、ツギハギ感満載で違和感タップリ&著作権的にグレーの「作品集もどき」が出来上がります。
先に述べたように、赤の他人の作品をAIに学習させ、自身の作品として偽るような不誠実な方を企業は高い金を出して雇いたいと思えるか?という話ですね。
画力や実力が足りていなくても「自身の力で作成した作品のみで勝負しているポートフォリオ」の方が断然好印象で将来性を感じさせますよ。
紙媒体やPDF形式で作成したポートフォリオの品質を手っ取り早く高めるには、高品質なテンプレートの活用が最も効率的かつ効果的です。
商用利用可能で高品質テンプレートばかり厳選!
今まで意識しなかった多くの「気づき」に出会えますよ。
※なお、ポートフォリオ制作はInDesign(インデザイン)を使うのが最も効率的です。
コチラでインデザ初心者の方向けにポートフォリオテンプレートの使い方を詳しく解説しております。
2時間あればポートフォリオが作れます。
編集にはInDesignが必須、未導入の方はInDesign公式サイトから入手しておきましょう。
ダウンロードする
A4に印刷したポートフォリオ、PDF形式、どちらも短時間で作成可能です。
ダウンロードする
作品を大きく見せる、制作過程を見せる、複数見せる、横長作品を画面内に綺麗に収める等、どんなパターンにも当てはめる事が可能ですよ。
ダウンロードする
単色に文字だけで構成した表紙も素敵です。
ページ中身のレイアウトパターンも豊富、あえて表紙をシンプルにする手法もアリですよ。
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以上、デザイナーの就職活動に必要なポートフォリオにおけるAI生成された作品の可否についてでした。
AIの進化に伴い、イラスト制作の考え方や感覚が変化しつつあります。
しかし現時点では人による創造と品質を重視する会社が多数です。
パッと見、美しく描かれたイラストでもよく見るとAIである事は分かります。
そしてポートフォリオに複数並ぶと、全体の雰囲気とAI生成画像のチグハグ感が更に目立ちます。
イラスト研究の為にAIで生成して分析する等の使い方は大いにアリです。
しかしイラストレーター志望でAI生成した作品をそのまま載せるのは…考えられないですよね。
自身が目指す業種や業界によってAI生成に対する考え方は変わります。
少なくとも「プロ」のイラストレーターやゲームクリエイターを目指す方はAIの使用を控えましょう。
画力や発想力の大幅な劣化、そして応募しても即お祈りされる可能性が高くなりますよ。
ではまた!
デザイナーの就職・活動に必要なポートフォリオに迷った際に参考にしてください。
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